ミャンマー語(ビルマ語)のフォントがZawgyiからUnicodeへ大改革
日本では10月1日は消費税アップの日だが、ミャンマーではミャンマー語(ビルマ語)フォントの大改革が始まった記念すべき日だ。ミャンマーでパソコンやスマホで使うミャンマー語フォントは、ほとんどの人がZawgyi(ゾージー)と呼ばれるフォントを使っている。これを世界標準のUnicode(ユニコード)に準拠したミャンマー語フォントに変えようとやっと国が動き出したのだ。
Unicode、Zawgyiとは?
コンピュータやスマホなどで使う文字は世界標準のUnicodeという規格で決められていて、世界中の人たちがこの規格に沿って作られた各言語のフォントを使っている。日本語のフォントももちろんこのUnicodeに準拠じて作成されたフォントだ。
世界中の人々がいろんな言語の文字をパソコンやスマホで問題なく読み書きできるのは、このUnicode規格があるからだ。ところが、このUnicode規格から外れたフォントを使っている国が世界でひとつだけ(だと思う)ある。それがミャンマーだ。
ZawgyiフォントはUnicodeミャンマー語フォントと比べると7割ほどは同じだが、残りの3割は違っている。Zawgyiで書かれたテキストをUnicode標準のパソコンやスマホで見ると文字化けして見える。Unicodeミャンマー語で書かれた文書をZawgyi標準のパソコンやスマホで見ても文字化けするのだ。
今ではWindowsにもmacにもAndroidにもiOSにもUnicodeに準拠したミャンマー語フォントが最初から入っていて、それが標準になっている。それでも、多くのミャンマー人はUnicodeミャンマー語フォントを使わずにZawgyiフォントを使っている。ミャンマーでは、ミャンマー語イコールZawgyiとなっているのだ。
本人がZawgyiとかUnicodeとか知らなくても、ミャンマーのモバイルショップやパソコンショップでスマホやパソコンを買うと、客のための「Zawgyiサービス」をショップが勝手に行っている。ショップで売っている製品はミャンマー語に関しては元々Unicodeが標準になっているのだが、ショップの店員が製品の設定を変えたりZawgyiフォントやZawgyiキーボードを新たにインストールするなどして、Zawgyiがミャンマー語の標準となるように変えている。
しかし、このZawgyiフォントはそもそもUnicode規格から外れているし、重大な欠陥が他にもたくさんある。ミャンマーでもデジタル化が進みつつあり、この欠陥のあるZawgyフォントを使い続けるのは大問題なのだ。Unicode化が進まないと、単なるパソコンやスマホの問題だけではなく、ミャンマーの社会や経済や文化などにも大きな悪影響を与える。
このように、非常に問題のあるZawgyiフォントをなぜほとんどのミャンマー人が使うようになったのか。それにはいろいろな理由が絡み合っている。これについては別の機会に書いてみたい。
どうすればいい?
今までZawgyiを使っていた人たちは、パソコンやスマホの設定を変える必要がある。何もしなければUnicodeのミャンマー語が文字化けしてちゃんと読めないからだ。比較的最近(3〜4年前くらいから)のスマホに関しては、ZawgyiからUnicodeに変えるのはそれほど大変ではないが、それ以前のスマホや特殊なスマホだと個人の手には負えない。専門家に頼まなければUnicode化は難しいだろう。
スマホでの具体的な設定方法については、こちらのMPTのページを参考にするといい。
MPT Myanmar | Moving Myanmar Forward
ところで、ほとんどのミャンマー人が使っているFacebookに関しては、Facebook側が特別な処置をしている。1年ほど(?)前から、スマホのFacebookアプリを使うとZawgyiとUnicodeの間で文字化けしないように文字を自動変換してくれるのだ。
パソコンについては、WindowsはWindows8以降、macは Lion 以降のOSには最初からUnicodeのミャンマー語フォントもミャンマー語キーボードも入っているので比較的簡単に設定ができる。しかし、それ以前のOSや特殊な方法でZawgyi化しているパソコンは結構難しい。中にはかなりやばい方法でZawgyi化しているパソコンもあるからだ。その場合には、専門家に頼まなければUnicode化できないだろう。
こちらは英語ページだが、今回のUnicode化についてかなり分かりやすくまとめているので参考になると思う。
Unified under one font system as Myanmar prepares to migrate fromZawgyitoUnicode
Unicode化の初日
Unicode化の初日である10月1日、携帯通信キャリアのMPTからちゃんとUnicodeのミャンマー語でショートメッセージが来た。他の携帯通信キャリアからもUnicodeでショートメッセージを送ってきている。
そこで、携帯通信キャリアのWEBサイトを見てみた。MPTは夕方までミャンマー語ページはエラーで何も見ることができなかったが、今はUnicodeでちゃんと見ることが出来る。TelenorとOoredooもちゃんとUnicodeのミャンマー語だ。しかし、MytelはまだZawgyiを使っていた。
民間の新聞社IrrawaddyとElevenはどちらともUnicode化していた。しかし、国営新聞のMyanmar AlinのサイトはZawgyiのままだ。ただ、PDFでダウンロードできる新聞紙面に関しては、10月1日からはUnicodeになっている。というように、主だったWEBサイトはかなりUnicode化が進んでいるようだ。ただし、中小サイトに関してはZawgyiのままが多い。
Facebookの書き込みはどうかと、パソコンでチェックしてみた(パソコンだとFacebookは Zawgy・Unicodeの自動変換をしない)。全部で50コメント中、Unicodeで書かれたコメントは8だった。ということは、16%になる。以前はほとんどがZawgyiだった(多分95%以上)ので、16%というのは1日目としては上出来かもしれない。
これからどうなる?
ミャンマー人みんながすぐにUnicodeを使うようになればいいのだが、いつまでもZawgyiを使う人が多いとやっかいなことになる。ショートメッセージやメールなどFacebookアプリ以外だとお互いのミャンマー文字が文字化けしてしまうので、せっかくUnicodeに変えた人がZawgyiに戻すかもしれない。
また、過去にZawgyiで書いた文書がたくさんある人も大変だ。コンバーターを使わないと過去の文書が文字化けして読めなくなるケースがあるからだ。OS側やアプリ側で自動変換してくれるようなシステムができるのを期待するしかない。
そういえば、私がZawgyi・Unicode問題に最初に気がついたのは2011年だった。その当時個人ブログにこういう記事を書いた。
ビルマ語(ミャンマー語)のUNICODEはUNICODEじゃなかった?
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たとえ今みんながZawgyiやAyarを使っていても、2年後3年後には確実にZawgyi-OneやAyarはすたれてしまう。できるだけ早いうちにZawgyi-OneやAyarをやめて正しいUnicodeに変えたほうがいい。でないと、せっかく自分が書いたビルマ語の文章が2〜3年後には文字化けで読めないという事態になってしまう。
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2011年の時点で、「2年後3年後には確実にZawgyi-OneやAyarはすたれてしまう」と書いたが、2019年でも多くのミャンマー人がZawgyiを使っている。私の予想が大外れしたわけだ。それでも、いつかは国が動き出すに違いないと私は首を長くして待っていた。そして、ついにその日が来たのだ。
みなさんも、もしZawgyiを使っていたらできるだけ早くUnicodeに変えてほしい。また、Zawgyiを使っているミャンマー人に会ったら「ユニコード、ユニコード、ユニコード」と、しつこく言い続けてほしい。
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