パダウかバダウか、それが問題だ
先日のブログで「バダウと雨」という記事を書いた。2〜3日後に「バダウ」でGoogle検索すると、この記事が2番目に来ていた。やったぜ! と喜んだが、妙に検索結果の総数が少ないし、バダウの花のことを書いているページが少ないのだ。画像検索でも黄色いバダウの花は少しだけ。なぜ?
ふと思い出した。次に「パダウ」で検索した。似た文字なので分かりづらいかもしれないが、最初の検索は頭が ba の音のバダウで、次の検索は頭の音が pa のバダウだ。すると出るは出るは、画像検索では画面中パダウの黄色い花だらけになった。そう、カタカナ表記ではバダウよりもパダウのほうがずっと一般的だった。
そもそも、この花(木)の名前をビルマ語(ミャンマー語)で書くと ပိတောက် (注1)だ。これを文字の通りに発音するとピタウッとなるが、ミャンマー人の実際の発音は違う。カタカナだと、バダウッと書くのが最も近い。ピがビに、タがダに変化する。こういう例は他にもたくさんある、遺跡で有名なバガンは ပုဂံ と書く。これを文字の通りに読むとプガンだが、ミャンマー人の発音はバガンだ。このようにビルマ語の文字と発音の不一致はけっこうある。一部は規則性(注2)があるが、規則性がない例外もけっこうあるから面倒だ。
ビルマ語の文字と音の不一致だけではない、ミャンマー式英文字表記(注3)の問題があるので、よりややこしくなっている。英文字表記だと Padauk になる。Google検索してもBadaukよりPadaukのほうがずっと多い。カタカナでパダウのほうが多いのはこの英文字表記の影響があるのだろう。
そういえば、バガンは以前パガンと一般的には書かれていたし呼ばれていた。英文字だと Pagan だ。90年代のいつごろからだろうか、Pagan が Bagan と表記されるようになった。それにつれ、日本でもバガンと言われるようになった。Padauk もそのうち Badauk に変わることがあるだとうか? そうなれば、パダウがバダウに変わるかもしれない。
それに、もう一つ問題を複雑化させているものがあった。ビルマ族以外の言葉の問題だ。ヤカインとラカイン、カインとカレンのように、ビルマ族と他の民族では発音が微妙に異なることが多い。地方の地名などは大変だ。チャイントン、ケントン、チェントンなど同じ町なのに3種類以上呼び名があるものもある。
話を最初に戻そう。私が最初に書いた「バダウ」は間違いではなかった。少なくても、パダウよりはバダウの方が本当の発音に近いのでバダウと書くべきだと思う。でも、「バダウと雨」の記事はタイトルを「パダウ(バダウ)と雨」と書き換え、文章中のバダウはパダウに変えることにした。インターネットの検索で多くの人にこの記事を見つけてほしいからだ。結局、長いものに巻かれてしまった。
モヒンガーにモンヒンガー、カンドージにカンドーヂ、レーダンにフレーダン、ピーにピィー、サガインにザガイン、シーポーにティーボー、カンティーにカムティー、ビルマ語にミャンマー語、悩みは尽きない。
注1)この文字はUnicodeのビルマ文字(ミャンマー文字)で書いているので、Windows8.1以降, Mac OS X Lion (10.9) 以降, Android 4.4 以降の場合はそのまま正しくビルマ文字が表示される。それ以前のPCやスマホ、また、Zawgyi-Oneなどをインストールしていると正しく表示されないこともある。
注2)前の音節の影響で、 p や s や t といった清音が b や z や d などの濁音に変わることが多い。たとえば、私の家の近くを走る U Wisara という道路の読みは ウーウィザラ というように、サの音がザに変わる。日本語の音便のようなもので、一定の規則性がある。
注3)日本語だとヘボン式や訓令式など公式の英文字(ローマ字)表記法があるが、ビルマ語語には国が定めた公式の表記法がない。それでも、標準のようなものがあるが、それが文書化されたものはまだ見たことない。誰か知っている方がいたら教えてほしい。
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