ヤンゴンの年越しはクルフィ マライ(アイスクリーム)で
今年の大晦日は去年より静かだ。近くでやっていた年越し野外コンサートの会場が他の場所に移ったからだろう。静かになるといつもの物売りの声も聞こえてくる。ちょっと哀愁を帯びた男の声が響いてきた。
「クルフィ マラーーーイ、クルフィ マラーーーイ」
クルフィ マライ(Kulfi Malai)はインドの伝統的なアイスクリーム。窓を開け「ちょっと待って」と言い、階段を降りた。
インド系のSさんはこの道数十年のクルフィマライ売り。いつも夜の8時頃に私が住んでいるここミンマナインにやってくる。先がちょっと細くなったステンレスの円錐形容器をたたくと、中に入っている凍ったクルフィマライが出てくる。
今日はSさんに彼のお父さんのことを聞いてみた。インドのファイザバード生まれのお父さんは、戦後間もない頃にラングーン(ヤンゴン)にやってきた。ラングーンで同じインド系の女性と出会って結婚し、子供が生まれ、クルフィマライの商売を始め、そして一生をヤンゴンで終えた。
父は亡くなったが、息子のSさんが大晦日の今日もクルフィマライを売り来た。これで、2019年から2020年への年越しは蕎麦ではなくクルフィマライに決定だ。
クルフィマライを口の中に入れると、濃縮された牛乳の味が口いっぱいに広がる。そこに、マライの風味が加わり何とも言えない独特のうまさだ。さらに、Sさんファミリーの歴史が重なっていると思うと、また格別の味である。
食べ終えると2020年になっていた。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いたします。
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