ミャンマーの餅、赤紫色のコーボウッ

ミャンマーのモチ、コーボウッ

何年か前にミャンマー人の知り合いからモチをもらった。コーボウッ(ခေါပုပ်)と呼ばれるそのモチはシャン州のおみやげで、なかなか美味かった。それを思い出し、ヤンゴンでも手に入らないか探した。ヤンゴンでは八百屋で売っているという話だ。近所にある路上八百屋で聞いてみた。

「コーボウッある?」
「あるよ。これ」

と指差したのは葉っぱでくるまれた物体。これがコーボウッだという。

「このコーボウッ、どこから来たの?」
「シャンからだよ」
「ひとついくら?」
「1,500チャット(約110円)」

家に帰って葉っぱを広げると、赤紫色をした物体が現れる。井村屋のあずきバーにそっくりな色だ。赤紫色をしているのはもち米の一種であるンガチェイ(ငချိပ်)を使っているから。こうした色の米は、日本では古代米とか言われている珍しい米だが、ミャンマーでは普通に食べている。もちろん、白いもち米もあるが、なぜかコーボウッでは赤紫色のものが多い。

生乾きのコーボウッは日本のモチと同じで、そのままだと固くて食べられない。1.5cmくらいの厚さに切って油で揚げるのがミャンマースタイルだ。口の中に入れると、もち米の粒の感触がほんの少し残っている。そして、独特の風味をほのかに感じた。これはかなりいける。日本のモチはもち米以外には何も入ってないが、ミャンマーのモチにはもち米以外に何かが入っている。

何人かに聞くと、塩と油とゴマだという。油はミャンマーで一般的なピーナッツ油だ。油が入っているので、モチの表面がちょっとテカっている。あとは塩とゴマだ。ピーナッツ油とゴマのコラボで独特の風味が生まれているようだ。

ヤンゴンでは八百屋でコーボウッを買えるが、他にも意外な場所でコーボウッを売っている。Facebookだ。ミャンマーではインターネットというとFacebook。メールもGoogle検索も使ったことがないけど、Facebookは毎日使っているという人が多い。ということで、インターネットショップもFacebookの中にある。

Facebook上の店に注文してみた。翌々日には自転車で配達に来た。コーボウッが半ペイタ(約800g)で4,000チャット(約290円)、配達料が1,000チャット(約70円)だった。包みを開けると、葉っぱに包まれたコーボウッが出てきた。色は八百屋で売っているものよりもかなり濃い。日本だと黒米と呼ばれているものと似ている。味は八百屋のものと同じで、こちらもおいしくいただいた。

ヤンゴンではシャン料理の店に行くと、メニューの中にコーボウッを見つけることが多い。すり胡麻や砂糖と一緒に出てくるので好みでかけて食べる。でも、コーボウッ自体に味がついているので何もつけなくても美味しい。

コーボウッはシャン州以外の地方でもよく見かける。イェナンジャウンでは、市場で買った赤白のコーボウッを昼食で寄ったレストランで揚げてもらった。

こちらはピンレブーの市場で売っているコーボウッ。形が日本の丸餅にそっくり。それに、油で揚げるのではなく炭火で焼いていた。

ところで、シャンではコーボウッのことはカオプックと呼ばれている。カオが米でプックが叩く(つく?)という意味だという。このカオプックが訛ってコーボウッとミャンマー語(ビルマ語)化したわけだ。他の呼び方(こちらが正式な名称らしい)で、カオタムンガというのがある。カオが米、タムが叩く(つく?)、ンガがゴマという意味という。やはりゴマが入るのがコーボウッの特徴のようだ。

また、カチンにも独自のモチがある。カチン語(ジンポー語)ではパパと呼ばれている。色も白と紫色の2種類ある。ゴマをふりかけたり、中にヤシ砂糖を入れたり、スィードーフ(腐乳の一種)をつけて食べたりするという。

ちょうど冷蔵庫の中にコーボウッとスィードーフがあった。試してみると、これはまた格別の味。ミャンマーの正月はこれで決まりだ。 

 

ヤンゴンの年越しはクルフィ マライ(アイスクリーム)で
フライデーナイトはシャン料理店 Nam Su で
 

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2024年03月19日(火)

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