ミャワディに行ってきた(2)~国境の Japanese Used Shop
ミャワディに行こうと思ったのは、実は日本人の友人WさんとKさんから話を聞いたのがきっかけだった。古道具が大好きなWさん、ミャワディにKさんと行ったときにメーソート側で日本の古い湯呑みやツボや人形を大量に置いている店を見つけたというのだ。いくつも同じような店があるという。おまけにイミグレを通らずに自由に行き来しているとのこと。そりゃ面白い!
その店のある場所はわからないが、ミャワディの市場で聞いてみた。
「メーソートに行きたいんだけど」
「大通りをずっと行くと橋があるよ」
「そこじゃなくて、ボートで渡るところ」
「ああ、この路地を行けばいい」
近かった。市場から10分ほど歩くと川が見えてきた。とても国境とは思えないひなびた小さな川。渡し船らしきボートがいたので聞いてみた。片道300チャット、すぐに出発できるという。「イミグレは?」なんていうヘボなことは聞かず渡ることにした。鉄板で作った丈夫そうなボートはあっという間に着いた。そこはタイのメーソートだ。
土手を上がったが何もない。何もない道をトボトボと歩いて行くとちょっと開けたところに出た。と思ったら、突然巨大な倉庫が見えた。これが噂の湯呑みを売っている店? まあ何でもいい。中に入ってみた。
倉庫いっぱいにいろんなものが売っていた。湯呑み、コップ、皿、ツボ、フライパン、人形、こけし、時計、引っ越しのときに処分したようなものが多い。旅館や料理店の名前が入った湯呑みや食器などもある。オーナーがいたので聞いてみた。
マグエ出身だという40才前後の女性、この店を出したのは2年ほど前。6、7年前からこのような店がメーソート側に出来たらしい。客はタイ人が多いという。バンコクあたりからも買いに来るらしい。日本食ブームで和物の食器が必要なんだろうか。こうした店がここだけではなく、川沿いに何ヶ所もあるというので驚きだ。
商品は日本からコンテナで
商品は日本からはコンテナでやってきて、重さいくらで買い取っている。私は湯呑みいくつかと花瓶ひとつ買った。バラ売りの湯呑みはひとつ300チャット(約25円)。花瓶はちょっと高くて5,000チャット(約430円)だった。ヤンゴンのアパートに大家が置いていった花瓶があったのだが、それを落としてしまい割ってしまったのだ。私は陶磁器を見る目はないのだが、気に入ったものがあったので買うことにした。後で裏を見ると「九谷・実山」と銘があった。もしかしてけっこういいやつ? 見る目がある人が来ると掘り出し物があるかもしれない。
写真撮影禁止との張り紙があったので聞いてみると、「だいじょうぶだよ」とのこと。商品の写真の後、店の外観を撮ろうとしていると「写真はダメだ」と、ミャンマー語で話しかけてきた高齢の男性。このあたりを仕切っている人かも。やはりここはちょっとヤバイ場所のようだ。
日本の中古自転車はタイ人に人気
近くには日本の中古自転車ばかり売っている店が数店舗あった。ひとつの店だけで数百台はある。話を聞いた店のオーナーはヤンゴン出身の40才前後の男性。以前はマレーシアで働いていたが、2年ほど前にここで自転車販売の店を始めた。自転車はやはり日本からコンテナで運んでくるとのこと。客はほとんどタイ人だ。ミャンマー人の客は少ないらしい。
日本から来る自転車も多くはMade in Chinaというのをもちろんオーナーも知っていた。しかし、日本で売っている自転車は同じ中国製でも違うのだという。日本で売っている中国製は品質のいい中国製で、タイやミャンマーで売っているのは品質の悪い中国製だというのだ。そうしたわけで、わざわざ日本から中古車自転車を持ってきてもいい値段で売れるらしい。ちなみに、1台700〜1000バーツ程度で仕入れるらしい。それを2,000バーツ前後で売る。けっこうな利益になる。
それにしても、食器といい自転車といい、なんでわざわざこんな辺鄙な国境地帯で売っているのだろうか。
日本からここに来るコンテナはタイ向けのコンテナではなく、ミャンマー向けのコンテナになっている。したがって、タイは素通りするだけということで、タイの税関はフリーパスだ。ミャンマー側に入るときも、イミグレもカスタムもないこの国境を通れば無税だ。それで、ここにこんなこんな店ができたというわけだ。もちろん、こうした実態をタイ側やミャンマー側のイミグレ、カスタムは知っている。「ナレーム・ナーレーム」と、自転車店のオーナーは言っていた。
ナーレームとは「わかり合う」というような意味だ。それが転じて、ワイロを渡して便宜を払ってもらうようなときにも使う。ここミャワディとメーソートの間では、ミャンマー人もタイ人もみんなわかり合っていた。
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