タイヨウチョウ(太陽鳥)がやってきた
2日間の旅行から帰ってきて一夜明けた朝だった。机の左側にある窓を開けると、変なモノがワイヤー(針金)に絡まっていた。このワイヤーは物干し竿ならぬ物干しワイヤーで、いつもそのワイヤーに洗濯物をかけているのだ。変なモノは卵くらいの大きさ、細い植物の茎や毛のような繊維質のものがからまった見るからに汚いモノだった。手で引っ張ってもワイヤーに絡んで取れないので、ハサミで切って下に落とした。
ほどなくして、窓の外に気配があった。見ると2羽の小鳥がホバリングしたり、ワイヤーの上に止まったりしていた。スズメを二回りほど小さくした小鳥の背中はうぐいす色(薄茶色)、腹は鮮やかな黄色だった。やっと分かった。あの汚いモノは彼らの巣だ。私が家を留守にしている2日の間に、彼らはここに巣を作り始めていたのだ。
ワイヤーの巣があった場所に止まった2羽は何か話し合っているように見えた。私の机は窓際にある。小鳥たちはすぐ近く、50cmくらいの距離だ。この窓はマジックミラーになっていて、日中は外から中はほとんど見えない。彼らも私の存在には気がつかないようだ。しばらく窓の外で小鳥たちは思案していたが、いつの間にか飛んでいってしまった。その日、彼らは何度か窓の外にやって来た。
私が住んでいる通称ミンマナインは昔高級官僚が住む官舎だったところだ。4階建ての古いアパートが数十棟あるが、建物と建物の間隔が50mほどあるし、緑も多い静かなところだ。1954年から1970年代に建てられたアパートなので、かなり古いが作りはしっかりしている。日本でいうと東京の同潤会アパートのような雰囲気だ。
小鳥たちは翌日もちょっと顔を見せたが、3日目はもう姿を現さなかった。この小鳥たち、ここミンマナインに4年住む私も初めて見る鳥だった。動物には詳しくない私は友人の大西さんに尋ねてみた。ミャンマーの動物や自然に関しては日本で第一人者の大西さん、すぐにメールの返事が来た。彼らはタイヨウチョウ(太陽鳥、Sunbird)の一種、キバラタイヨウチョウ(Nectarinia jugularis)という名前だった。
鳥類図鑑では、ミャンマーには16種類のタイヨウチョウがいることになっている。その中で、このキバラタイヨウチョウが一番人家に近い場所まで分布しているそうだ。しかし、ヤンゴンの、それもダウンタウンに近いこの場所に生息していることは珍しいという。また、キバラタイヨウチョウのオスは喉の部分に太陽が当たるとメタリックブルーに輝くという。そういえば、ここにやってきたカップルの片方は時々メタリックブルーに美しく輝いていた。
大西さんによると、ヤンゴンは功徳の習慣とゴミ処理システムの未熟さのために、野鳥の生態系が歪んできていて、ドバト、スズメ、イエガラスの三種の勢力が強く、他の種類の鳥がどんどん減ってきているという。
彼らはヤンゴン市内では珍しい鳥だった。残念なことをした。私の無知で巣を落としてしまったが、そのままにしていたら子育ての様子を毎日50cm先で見ることができたのに。
コメント
太陽鳥 残念でしたね。ほんと 50センチの近くで見る事が出来たのですもの。
窓の外 3回(3年)鉢植えのバラの木にハミングバードが巣を作りました。可愛かったです。
時々 一緒に 身じかに暮らしてみて 本当の事が解ります。
takakoさん
後藤さんのブログのコメント欄をお借りして横から失礼します。大西です。
鉢植えに巣を作った鳥、機会があったら見てみたいものです。全身が写っている写真でもありましたら種類まで分かりますので。
太陽鳥、今度来たら大歓迎します。巣を作ってもらうには、しばらく家を空けたほうがいいかも。