サービスエリア「115マイル」の不思議
ヤンゴンから高速道路を北へ115マイル走ったところに、そのままずばりの「115マイル」と呼ばれるサービスエリアがある。マンダレーやバガンなどヤンゴンから北へ向かう長距離バスは必ずここで小休止となる。
夜9時出発の夜行バスは3時間後の12時ごろに115マイルに到着した。
「115マイルに到着しました。30分停車しますので、その間にFeelでトイレと食事を済ましてください」
と、車掌によるアナウンスがあった。寝ている乗客も無理やり起こされて車外に出る。
ここ115マイルには大きなレストランが5〜6店並ぶ。Feel(フィール)は入り口から2つ目のレストラン。バスはそのFeelに近い場所に止まっている。乗客はぞろぞろとFeelの横の通路を歩いていく。その先にはトイレがある。トイレは大渋滞だった。特に女性用は長い列で、半べそかいている女の子もいた。30分の停車時間に間に合うかどうか。同行者として妻のいる私、この状況はやばい。
そういえば、115マイルにあるレストランは Feel だけではない。そこで、隣りの Shwe Pyi 115miles(シュエピー115マイルス)という名前のレストランを覗いてみると、ガラガラ。広いフロアに客は2組だけ。トイレは店内にあり、掃除もきちんとされていた。そこでゆっくりと用を足す。
食事をする時間も十分あったので、私はシャンカウスエ(シャンヌードル)を頼んだ。値段は普通だし、味は悪くない。隣りのFeelの喧騒と比べると静かな楽園だ。それにしても不思議だ。なぜみんなFeelばかりに殺到するのか。Feelは人がいっぱいでトイレも食事も大変だ。
店のスタッフに、なぜ客が少ないか聞いてみた。
「うちはホテルも併設していて、値段が高そうに見えるからかなあ」
と、はっきりしない。
妻(ミャンマー人)に聞いてみると、どこのレストランに入るか何も考えてなかったとのこと。バスから一番近いし、みんなFeelに行くし、車掌もアナウンスしているので自然と足がFeelに向かったという。
そいえば思い出した。この115マイルのサービスエリアができる前、長距離バスは街道筋に面した地元の食堂の前で止まっていた。乗客はそこでトイレを済まして食事もとる(あの汚かったトイレも今では懐かしい)。バスの運転手と車掌はその食堂でたくさんの料理をテーブルに並べていた。聞くと、運転手と車掌は無料で食べることができるという。バスの乗客を連れてきたのと引き換えに、彼らは無料で食事ができたのだ。
こうしたバス会社とレストランのコミッション契約はミャンマーでは一般的だという。私が乗ったバスの会社はFeelと契約していたようだ。それでバスはわざわざFeelの前に止まり、Feelを利用するようにと車内アナウンスをしていたのだ。しかし、どのレストランに入るかは乗客の自由だ。混みすぎのときは他のレストランを覗いてみたほうがいい。
ところで、Feelはミャンマーで大手のレストランチェーンだ。ビルマ料理以外にも、シャン料理など他の民族の料理や中華もあるのでいろんな料理を楽しめる。値段も庶民的だしウェイターやウィトレスもきびきび働いていて気持ちがいい。ミャンマーで一番人気のレストランになるのも納得だ。
ミャンマーでは「ナンメージーデ」という言葉をよく聞く。これは「有名だ」という意味だ。有名だからみんなが行く、みんなが行くから私も行くといった具合に有名店に客が集まりやすい。このあたりは日本とも似ているというか、日本以上だと感じる。115マイルでFeelに客が集中するのも当然といえば当然か。
でも、バスの停車時間は30分しかない。Feelのトイレの混雑には要注意。
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