ミャンマーにもコシヒカリのような米がある。それが、ポーサンムエ(Paw San Hmwe)と呼ばれている米だ。元々、イラワジデルタ地帯にあるバテインがオリジナルの地だ。ポーサンムエは直訳すると「初めて出てきた香り」というような意味で、香りが良いことで知られている。また、食感もパサパサした一般のミャンマー米と比べるとしっとり感があり、粘り気が強いシャン米にちょっと近いという。
いつもは日本米に近いシャン米を食べている私だが、せっかくだからミャンマーのコシヒカリであるポーサンムエを食べてみることにした。ちなみに、ヤンゴンで有名な食料品スーパーマーケットであるシティーマート(City Mart)で、シャン米が5kgで7500チャット(約830円)、ポーサンムエが5kgで5500チャット(約610円)だった。
買ってきたポーサンムエ、いつも見慣れている細長いミャンマー米じゃない。私がいつも食べているシャン米は日本米に似た味と食感だが、形はかなり細長く、日本人がイメージしているインディカ米そのものだ。その点、ポーサンムエは丸っこくこっちのほうが形は日本米に近い。味も日本米にそっくりかもと、期待が高まる。
米5合にたいして水もピッタリ5合の目盛りに合わせた。炊飯器の設定は「銀シャリ」。スイッチオン! 炊飯中も、日本米とはちょっと違うがなかなかいい香りがする。炊きあがった!
あれ?何だこれは!?
炊きあがったご飯は硬くてボソボソだった。これがミャンマーのコシヒカリ?
こんな米にコシヒカリという名をつけていいわけはない。どうしよう、こんなの食べられない。でも5合も炊いたのでこのまま捨てるのはもったいない。水をつぎ足してもう一度スイッチオン。出来上がった米はさっきより柔らかくなって食べられないことはないが、はっきり言ってまずい。それに、炊飯器の中で異常に膨れ上がっていた。5合入れたはずなのに6合くらいはありそうだ。
最初にできた固いご飯は明らかに水が不足していた。なぜ? 米は5合で水も5合の目盛りにぴったり合わせた。もしかしてポーサンムエは多めに水を入れなきゃいけないのか? 数日後、まずい5合分のポーサンムエをやっとの思いで食べ終え、ポーサンムエの炊飯実験をすることにした。2合の米に対して2.5合分の水にした。これが大正解だった。
かなりおいしいご飯になった。ポーサンムエは水を炊飯器の指示よりも25%増で炊くのがいいようだ。米が4合なら水は5合分だ。この割合で出来上がったご飯はちょうど5合分ほどだ。
ポーサンムエの粘り気は日本米やシャン米よりは少ないが、普通のミャンマー米よりは多い。ちょうど中間くらいだ。香りはけっこういい、ヤンゴンで買ったカルフォルニア米よりいいかも。炊きあがりの量が25%増しになるように、食感はふっくらあっさりしている。見た目の量ほどお腹にはたまらない。ミャンマーカレーなどのビルマ料理だったらシャン米よりポーサンムエのほうがいいだろう。それにしても不思議なのは形だ。炊く前はあれほど丸っこかったのに、炊きあがりは細長い見るからにインディカ米の形をしている。なんか騙されたような気がする。
元々、ミャンマーでは他の東南アジアと同じように「湯取り法」という方法で米を炊いていた。たっぷりのお湯で米を「煮る」のだ。最後にこのお湯は捨てる。こしてできあがったご飯は、粘り気が少なくさっぱりしたものになる。これに対して日本で一般的なのは「炊き干し法」と呼ばれている。日本でも江戸時代までは湯取り法もあったらしいが、今ではほとんど炊き干し法だ。ミャンマーの家庭でも最近は炊飯器を使うとことが多くなったので、昔と違って炊き干し法が増えているらしい。もしかして、ポーサンムエの人気が高くなったのと炊飯器の普及と何か関係があるかもしれない。
追記(2017/2/17)
ポーサンムエを炊くのには、電気炊飯器よりも湯取り法という方法で炊いたほうがずっと美味しいということがわかった。湯取り法だとサラサラの米が炊き上がる。また、ポーサンムエの新米は日本米以上の粘り気のあるモチモチの炊きあがりになる。新米は湯取り法ではなく、普通の電気炊飯器のほうがずっといい。詳細はこちらのブログでどうぞ。
ミャンマー米は世界一おいしい? 〜ポーサンムエを湯取り法で炊いてみた
ミャンマー米は世界一おいしい? 〜驚きのポーサンムエ新米
(写真・文:後藤 修身)