ミャンマーの仕事

街角で見かけるいろいろな仕事人に突撃インタビュー。ミャンマー式、商いの神髄とは。

コンヤ屋台の女将の話

ミャンマー名物「噛みタバコ(コンヤ)」。コンヤで朱色にそまった男たちの歯と、彼らが道路に吐き捨てた朱色のシミは、この国の日常を彩るのに欠かせない要素だ。取材をしていたら、ふと、鮮やかな手さばきでコンヤを次々と巻いて行くコンヤ屋台の女性の姿が目に留まった。客が途切れた一瞬を狙って、彼女に話を聞いた。

なんだい? 忙しいんだよ。顔写真を撮るのはやめとくれよ。それ以外はかまいやしないけど。どれくらい経験があるかって? 知らないよ。ほんの子供のころからコンヤを巻いてるからね。ずいぶん長いよ。コンディー(ビンロウの実)と石灰をといたもの、そして上から振り掛けるフレーバー、この3つをコンユエ(キンマの葉)で巻いて出来上がり。これが3個1セットで100ksだ。えっ? 1日の売り上げだって? そんなことは口に出して言えないよ。商売が悪くなるからね。(エンヤン注1)

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コンユエとコンディーがどこ産かなんて分からないよ。市場へ行って仕入れてるだけなんだから。フレーバーは見ての通りたくさんあるよ。売れ筋は“ベインマー”ってやつと“92”。特にフレーバーの売れ行きに、流行り廃りはないねぇ。どんな味がするかなんて、そんなの知らないよ。私は食べたことないんだからね。後は食べてる人に聞いとくれよ。

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その辺でコンヤを食べている道端の人に話を聞いてみた

男性1:なんだなんだ、コンヤについて知りたいのか。面白そうだな。何でも聞いてくれよ。コンヤを噛みはじめたのは58歳からだよ。え? 今は60歳だよ。だから噛みはじめたのは割と最近だよ。特に何かきっかけがあったわけじゃないよ。なんとなくだ。好きなフレーバーは、“45”と“92”だな。

男性2:オレは今、37歳。25歳の時からずっと噛んでるから、オレのほうが長いな。自分で試したり、人から勧められたりしていろいろ噛んでみたけど、やっぱり“92”と“45”が気に入ってる。“92”は風味が良いし、“45”は辛くてスースーして、口の中がすっきりする。どっちもいいな。

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割り込んできたおばちゃん(コンヤは噛んでいない):そうそう。コンヤを噛むと口の中がさっぱりするんだよ。ご飯を食べたり、コーヒー飲む度に噛むといいんだよ。あんた、知ってるかい? 歯痛や腹痛にもコンヤは効くんだよ。ああ、飲むんじゃなくて、噛むだけでいいんだよ。

男性1:そうだよ。実も汁も全部吐き出さないとだめだよ。飲み込むもんじゃない。だいたいコンヤ一個当たり30分強くらいはもつかな。1日、20個くらいは食べてる気がするな。まあ、ほぼ一日中噛んでるってことだな。ガハハハハハハハ…。

(写真:後藤修身、文:菊池美弥、通訳:Laz)

注1:ミャンマーでは、「XXを言葉に出すと、XXに悪い」と考えられていることがいくつかある。「売り上げを口に出すと、売り上げが悪くなる」のほかによく聞くのが、「バスの到着時刻を聞くと時間どおりに着かなくなる」というもの。口に出さなくても着かないことが多々ある気がするが…。